夏が近づき、家族で山へ出かける計画を立てている方も多いのではないでしょうか?鹿児島には、桜島を望む雄大な山々や、緑豊かな自然を満喫できる素晴らしい登山道がたくさんあります。子どもたちと一緒に登山をする時間は、かけがえのない思い出になることでしょう。
しかし、夏の登山には一つ、大きな注意点があります。それが「熱中症」です。
特に、体温調節機能が未熟な小さなお子さんを連れての登山では、大人以上に慎重な対策が求められます。介護支援専門員、応急手当普及員(救急救命講座の講師資格)として、子連れ登山を始める鹿児島のお父さん向けに、熱中症を防ぐための「基本中の基本」を徹底解説していきます。
なぜ登山の熱中症対策が重要なのか?

「熱中症」は、高温多湿な環境下で体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなることで起こる様々な症状の総称です。登山中は、平地よりも以下のような理由で熱中症のリスクが高まります。
- 運動による発熱: 登山は全身運動であり、常に体を動かすことで体内で熱が生産されます。
- 高温多湿な環境: 夏の山は、日差しが強く、湿度も高くなりがちです。特に鹿児島は、蒸し暑い日が多いですよね。
- 水分・塩分補給の難しさ: 行動中はこまめな水分補給が重要ですが、荷物の量や休憩場所の制約から、十分な補給が難しい場合があります。
- 子どもの体温調節機能の未熟さ: 小さな子どもは、大人に比べて汗腺の発達が未熟で、体温調節機能が十分に機能していません。また、地面からの照り返しの影響も受けやすいため、大人よりも早く熱中症になるリスクがあります。
これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることが、安全で楽しい子連れ登山には不可欠です。
熱中症の基礎知識10選:普遍的な基本中の基本!
まずは、熱中症について知っておくべき基本的な知識を10個ご紹介します。これらは「基本中の基本」であり、登山だけでなく、日常生活でも役立つことばかりです。
1. 熱中症は「予防」が最も重要
熱中症は、なってしまってからでは対処が難しく、重症化すると命に関わることもあります。最も大切なのは、熱中症にならないための「予防」です。症状が出てからではなく、出発前から予防を意識しましょう。
2. 水分補給は「喉が渇く前」に

喉が渇いたと感じた時には、すでに体は水分不足の状態です。特に中高年者は若年者に比べ喉の乾きを感じにくくなります。登山中は、喉の渇きを感じる前に、意識的にこまめに水分を摂ることが大切です。目安として、15~20分に1回程度、コップ1杯(100~200ml)程度の水分を摂るように心がけましょう(参考:環境省 熱中症予防情報サイト、日本スポーツ協会 熱中症予防運動指針)。子どもにも「お水飲もうね」と声をかけ、習慣づけることが重要です。
3. 水分だけでなく「塩分」も補給する
汗をかくと、水分だけでなく体に必要な塩分(ナトリウム)も失われます。水だけを補給していると、体内の塩分濃度が薄まり、「低ナトリウム血症」という状態になり、かえって熱中症を悪化させる可能性があります(参考:厚生労働省 水分補給と休憩、日本スポーツ協会 熱中症予防運動指針)。スポーツドリンクや塩飴、タブレットなどで、水分と同時に塩分も補給しましょう。
4. 暑い時間帯を避ける

日中の最も暑い時間帯(午前10時~午後2時頃)の行動はできるだけ避けるべきですが、登山となると簡単にはいきません。思った以上に下山に時間がかかり、暗くなってしまうことがあるためです。早朝に出発し、涼しい時間帯に下山するか、木陰の多いコースを選ぶなどの工夫をしましょう。
5. 涼しい服装を心がける
吸湿速乾性のある素材のウェアを選び、汗をかいてもすぐに乾くようにしましょう。綿素材は汗が乾きにくいため厳禁です。登山やスポーツなどのアクティビティでは、汗を素早く吸い上げ、外に発散させる「吸湿速乾性」に優れたポリエステルなどの化学繊維や、メリノウールなどの素材が推奨されます。また、帽子は必須アイテム。直射日光から頭部を守り、熱がこもるのを防いでくれます。首元を冷やすタオルやクールスカーフなども有効です。
6. 体調管理を徹底する
睡眠不足や疲労、風邪気味など、体調が悪い時は熱中症になりやすくなります(参考:厚生労働省 職場における熱中症対策の強化について、日本スポーツ協会 熱中症予防運動指針)。前日はしっかり睡眠をとり、体調を整えてから登山に臨みましょう。少しでも体調に異変を感じたら、無理せず中止する勇気も必要です。特に登山前にテンションの上がった子どもは無理をしがち。顔色や元気がない様子など、普段と違う点がないか、常に注意深く観察してください。
7. こまめな休憩とクールダウン
定期的に休憩をとり、体を休ませましょう。日陰や風通しの良い場所を選び、ウェアを緩めたり、濡らしたタオルで体を拭いたりして、積極的にクールダウンを図ります。休憩中に子どもが遊びたがっても、クールダウンを優先させましょう。
8. 熱中症のサインを見逃さない
熱中症の初期症状には、めまい、立ちくらみ、筋肉痛、大量の汗、頭痛、吐き気などがあります(参考:環境省 熱中症環境保健マニュアル、日本気象協会 熱中症ゼロへ)。子どもでは、ぐったりしている、顔色が悪い、汗をかいていないのに体が熱い、などのサインが見られることがあります(参考:消費者庁 Vol.593 子どもの熱中症対策を心がけましょう!、武蔵野市 子どもの熱中症に気をつけましょう)。これらのサインを見逃さず、少しでも異変を感じたらすぐに休憩し、適切な対処をしてください。
9. 応急処置の基本を覚える
もし熱中症の症状が出たら、以下の応急処置をすぐに実行しましょう。
- 涼しい場所へ移動: 日陰や風通しの良い場所へ移動させます。
- 体を冷やす: 衣服を緩め、首筋、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている場所を冷たいタオルや保冷剤で冷やします。最近では手のひらを冷やすことも有効であることがわかっています(参考:ウェザーニュース アスリートも実践 熱中症予防に「前腕冷却」「手のひら冷却」が効果的)。
- 水分・塩分補給: 意識がはっきりしている場合は、スポーツドリンクや経口補水液を少しずつ飲ませます。
- 医療機関へ連絡: 意識がない、呼びかけに反応しない、自力で水分補給ができない、けいれんがあるなどの重症の場合は、すぐに医療機関に繋ぐ必要があります。
10. 無理な計画は立てない
子連れ登山では、大人のペースでなく、子どもの体力や興味に合わせて無理のない計画を立てることが何よりも大切です。普段の散歩や近所の公園遊びで、どれくらいの距離や時間なら歩けるか、事前に確認しておくと良いでしょう。むしろ少し物足りないくらいが、次への意欲につながります。
鹿児島登山に特化したアドバイス:子連れ登山を安全に楽しむために
熱中症の基礎知識を踏まえた上で、鹿児島での子連れ登山をより安全に楽しむための具体的なアドバイスをいくつかご紹介します。
1. 鹿児島の気候を考慮した準備
鹿児島は夏場、特に湿度が高く、体感温度が非常に高くなりがちです(参考:Weather Spark 鹿児島市の気候、月別の気象、平均気温、tenki.jp 気温も湿度も高くてツライ夏……全国ランキング発表!!日本一の《ジメ暑(じめあつ)》県はどこ!?)。天気予報だけでなく、湿度予報も確認し、熱中症警戒アラートが発令されている日は、無理せず登山を中止する勇気を持ちましょう。
2. 登山コース選びのポイント
- 日陰の多いコースを選ぶ: 樹林帯が多く、直射日光を避けられるコースを選びましょう。
- エスケープルートの確認: 万が一の際に、すぐに下山できるエスケープルートがあるかどうかも確認しておきましょう。
- 登山者が多い山を選ぶ:具合が悪くなったときに助けてもらえるよう、登山者が多いメジャーな山を選びましょう。レアな山だと登山者が自分たちだけで、いざというときに助けを呼べません。
3. 子どもとのコミュニケーション
子どもは体調の変化をうまく伝えられないことがあります。「疲れた?」「喉乾いた?」とこまめに声をかけ、子どもの様子をよく観察しましょう。また、休憩中に「あとどのくらいで着くの?」と聞かれたら、「あの木まで頑張ったら休憩しようね」など、具体的な目標を示してあげると、モチベーションを維持しやすくなります。
4. 楽しい工夫で水分補給を促す

子どもが飽きずに水分補給できるよう、可愛い水筒を用意したり、好きな味のスポーツドリンクを持っていったりするのも良いでしょう。休憩中に「ジュースタイムだよ!」と声をかけるなど、水分補給を楽しいイベントにする工夫も有効です。
5. 非常時の備え
万が一の事態に備え、以下のものをリュックに入れておきましょう。
- 予備の水分・塩分補給食
- 冷たいタオルや冷却シート
- 携帯電話(充電済み)とモバイルバッテリー
- GPSアプリ(または地図とコンパス)
- ファーストエイドキット(絆創膏、消毒液、常備薬など)
まとめ:安全第一で、最高の思い出を!
熱中症対策は、登山の安全を守る上で最も基本的な、そして最も重要な要素です。今回ご紹介した「基本中の基本」をしっかりと頭に入れて、事前の準備から登山中の行動、そして万が一の対処まで、常に意識して行動するようにしてください。
基本的な登山の安心ポイントは下記記事からも確認できます。
特に、小さなお子さんとの登山では、大人が想像する以上に子どもの体には負担がかかります。子どものペースを尊重し、無理は絶対にしないこと。そして、少しでも異変を感じたら、すぐに引き返す勇気を持つことが、何よりも大切です。
鹿児島には、家族で楽しめる素晴らしい山がたくさんあります。熱中症対策を万全にして、子どもたちの笑顔とともに、安全で最高の登山体験を積み重ねていってください。




コメント